二重構造は、魔法瓶と同じ原理でできている
「なぜ、このタンブラーは長時間冷たいままなのか」。そう感じたことはないでしょうか。
秘密は、器の壁の中にあります。二重構造の器は、内側と外側の金属層の間に密閉された空気層(または真空層)を持っています。これは、いわゆる「魔法瓶」と同じ原理です。
熱の伝わり方には3種類あります。伝導(固体を通じた伝達)、対流(液体・気体の流れによる伝達)、放射(熱線による伝達)。二重構造はこの3つを同時に遮断することで、飲み物の温度を長時間保つことを可能にしています。
知識コラム
なぜ冷めないのか、3つの理由
熱は、固体を通じて伝わります(熱伝導)。二重構造では、内側と外側の金属の間に空気の層があるため、外気の熱が直接飲み物に届きにくくなっています。
たとえばシングルウォール(一重構造)のグラスに氷水を入れると、外側がすぐに結露します。これは、外気の熱がガラスを通じて中の水に伝わっている証拠です。二重構造はこの経路を断ちます。
熱は、空気や水の流れに乗っても移動します(対流)。二重構造の密閉された空気層は、外部との空気の流れを遮断します。
真空二重構造の場合、層内の空気そのものを極限まで取り除くことで、対流による熱移動をほぼゼロにします。魔法瓶が非常に高い断熱性を持つのはこのためです。
熱は、赤外線などの熱線としても放射されます。二重構造の内壁には、ステンレスそのものの金属光沢が機能します。金属は熱線を反射する性質があるため、外部からの放射熱を跳ね返し、内部の温度変化を抑えることができます。
これが、ステンレス素材が断熱器具に多用される理由のひとつです。

素材について
18-8ステンレスとは何か。
ARTiSANの多くの商品に使われているのが「18-8ステンレス」という素材です。この数字は、鉄にクロムを18%、ニッケルを8%含む合金であることを示しています。
クロムは表面に酸化膜(不動態膜)を形成し、錆の原因となる酸素や水分の侵入を防ぎます。ニッケルはこの膜をより安定させ、耐食性と耐熱性を高める役割を担います。
食器・キッチン用品に広く採用されているのは、この安定性と清潔さを保ちやすい特性によるものです。金属素材でありながら食品に対して安全性が高く、酸性・アルカリ性の食品にも影響を受けにくいとされています。
金属の器に漆を施す、ということ。
漆は、日本で古来から使われてきた天然の塗料です。漆の木の樹液を精製したもので、硬化すると非常に強固な塗膜を形成します。耐水性・耐酸性・耐熱性に優れ、食器への使用に適した素材として、縄文時代から日本の食文化を支えてきました。
ステンレスという現代の金属素材に漆を施すことで、二つの素材の長所が重なります。18-8ステンレスの構造的な強度と衛生性。漆の豊かな色彩と、艶やかな表面。
この組み合わせが、漆磨シリーズの器の外観を形成しています。一般的な陶磁器の漆塗りとは異なり、ステンレスの金属光沢の上に漆の深みが乗ることで、独特の質感が生まれます。
この知識を踏まえると、より深く理解できる
二重構造の器
知っていると、器の選び方が変わる。
二重構造という仕組みを知ると、器を手に取るときの感覚が少し変わるかもしれません。
「なぜ結露しないのか」「なぜ長く冷たいのか」。その答えが、器の壁の中にある。そう思いながら使うと、日常の道具が少し違って見えてきます。
素材と構造を知ることが、長く使うための最初の一歩です。































